カテゴリー: 高血圧
2023/12/03
減塩食は降圧薬1剤分の効果!
先日、JAMAという有名な医学雑誌に、院長も研究に参加していたCARDIA研究から面白い研究結果が報告されました。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2811931
高血圧には塩分感受性というものが個々に存在します。同じ、10gの食塩を摂取しても、人それぞれ血圧の上昇に違いがあるというものです。この研究は、中高年のアメリカ人を対象に、高塩分食(通常の食事に1日約5.6gの食塩を追加)と減塩食(1日約1.3gの食塩)を1週間づつ続けて血圧の変化量をみる研究でした。そして、高塩分食摂取時と比べ減塩食摂取時で平均血圧が5mmHg以上低下した場合を”食塩感受性あり”としてどれだけ低下するのかを観察した研究でした。
結論から申し上げると、
・高塩分食摂取時と比べ、減塩食摂取時に平均動脈圧が低下した割合は73.4%。
・”食塩感受性あり”は46%。
・通常食に比べ減塩食の摂取で、1日当たりの食塩摂取量が5.8g減少し、それに伴い収縮期血圧が6mmHg低下。
・高塩分食摂取群と減塩食摂取群の平均収縮期血圧差は8mmHg
この結果は、初診の高血圧患者さんに院長がまず、生活習慣改善、特に減塩からと伝えている事そのものです。
カルシウム拮抗薬であるアムロジピン5mgやサイアザイド系利尿薬であるヒドロクロロチアジド12.5mgを処方する際に、
必ず一言、
塩分約5gの減塩がこの内服薬1剤分の効果なのですよ。
と言って処方します。
日本人の塩分摂取量はアメリカ人よりも多く、塩分制限の効果がより出ることが期待されます。
そんな中、ラーメン好きの院長は1日3食ラーメン食にして血圧の変動を確認しようとしました。
結論は1週間持たず、2日目朝にして血圧上昇と腹部不快感と倦怠感を自覚し、高塩分食(本研究では1週間続けているのですが)から離脱しました。。。
家系ラーメンがダメだったのか。。煮干し系が合わなかったのか。。。もう、ラーメンは当分いらない状態になりました。さらに、若い時は塩分不感受性であったのに、高塩分量に反応して血圧上昇を垣間見てしまい、いろいろがっかりした週末でした。。。
みなさん、特に今年は飲み会シーズンで複数回の会食に出かけられる患者さんが多めにおられると実感しております。
外食は飲酒・塩分量が多くなり、更にシメのラーメンなんか食べてしまったらきっと、翌朝ひどいことに。。。
どうぞ、ご自愛くださいませ。
2023/11/02
運動の秋!やるぞベンチステップ運動!
なかはら内科クリニックです。
食食の秋、運動の秋ですね!
週末は娘と長野にハイキングに行ってきました。
子供達はテニスをしていて、その際にベンチステップトレーニングをしているですが、意外と家の中でも行えて簡便なので紹介しようと思います。
具体的なやり方は以下のNHKのリンクに動画がありますので、参考にしてみてください。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_60.html
<ベンチステップ運動の強さの目安>
基本は無理しない事です。最初は、10cmから始め、20cmの高さになるといいと思います。
最初は、10cmから始め、慣れてきたら高さを上げましょう。
脂肪が燃焼するに20分以上かかるといわれています。
最初は無理なのない時間(5分でも10分でも)から始め、20分以上を目標にしましょう。
4ステップで一回です。つまり、台に乗って、床に両足が戻るまでの1往復が1回となります。
一般の目安:1分間に20回 (およそ速歩:5メッツMETS)
低体力者:1分間に15回 (およそ速歩:4メッツMETS)
超低体力者:1分間に10回 (およそ速歩:3メッツMETS)
特に超低体力者で20cmの上り下りが困難な場合は、10cmの高さで1分間に15回を目指してみましょう。
<運動時間>
最初は無理なのない時間(5分でも10分でも)から始め、20分以上を目標にしましょう。
週3回以上(可能であれば毎日)、または週150分以上が目標です。
以下は運動強度の目安です。


2023/10/15
死亡に影響する修正可能な(改善したらリスクが減る)危険因子とは!?
今週、世界の臨床医学で最も権威のある医学雑誌から、非常に有用な研究が報告されました。
これは以前、院長のブログでも取り上げたトピックに近い内容です。
を参照ください。
心血管疾患と死亡率に対する修正可能な危険因子の世界的影響 : NEJM 2023; 389:1273
34ヵ国の112のコホート研究(総勢約150万人)の10年後心血管イベント、死亡率を地域、年齢、性別で階層化して評価 し、
以下5つの項目が修正可能な危険因子と同定されました。
①BMI:肥満度
②収縮期血圧
③non-HDLコテステロール :LDLコレステロールや中性脂肪(TG)
④喫煙
⑤糖尿病
これらは今からでもコントロールしようと思えばできる項目です。
予防医学の大切さを示唆する研究でした。
2023/10/07
喫煙でどれだけ寿命が短縮するのか?
先日、イギリスで議会に紙タバコの「生涯禁止」法案を提出との報道がされました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7828362d0fb8ed9a8750c968cf58a19e0b961643
昨年、ニュージーランドでも紙タバコの「生涯禁止」法案が可決されています。
この背景に以下の論文があります。
禁煙でどれくらい寿命が延びるかという事に関して、
イギリスで約3万4千人の男性医師を50年追跡調査した報告です。
報告によると、
喫煙者は非喫煙者に比べ10年寿命が短いが、
18歳で喫煙開始として、
30歳までに禁煙すれば寿命はほぼ変わらない。
40歳で禁煙すると9年の寿命を稼げる。
50歳で6年の寿命を稼げる。
60歳でも3年の寿命を稼げる。
論文は、禁煙するのに遅すぎることはないと結論しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC437139/
また、ある報告では禁煙して7年後より非喫煙者と同程度の心疾患発症リスクになるとも言われています。
(COPDに至っているような呼吸器疾患は治りませんが。。)
もちろん
電子タバコの同じと考えられています。
喫煙は炎症を引き起こしてしまうので、動脈硬化症の進展や発癌とその進展に大きく寄与します。
以前、糖尿病の寿命の話をしましたが、一つ一つリスクを減らすことが大切ということがわかります。
高血圧・血糖・コレステロールのコントロールをしても、年齢や性別のリスクは拭えません。
さらにこれらのリスクをコントロールしていても喫煙していると元も子もないのです。
2023/09/10
なかはら内科ニュース
今年秋から来年度に、なかはら内科クリニックがバージョンアップいたします!
その1
今まで、診察前に体重測定を実施し、体重、血圧、血糖値の推移を見ながら生活指導を行ってきましたが、体重だけでなく、体組成測定機を新規に導入します。
そうです。ジムに置いているアレです。
但し、正確性を担保するため医療機器として認可された機材を導入します。
実は体組成計は電気量販店にもあるようにピンキリの世界で、精密性・正確性を担保された医療機器としては日本には3種類しかないのです。
定期的に体重だけでなく、筋肉量や脂肪量を測定することにより、もっと患者さん健康に対する行動変容を促したいと考えています!
https://www.tanita.co.jp/product/business/bodycompositionanalyzer/4102/
その2
超音波機械の変更です。
心疾患、甲状腺疾患、動脈硬化症などで役立つ超音波検査:エコーですが、携帯電話やパソコンと同じで日々進化しています。
その3のためでもありますが、診断精度を向上させるべく最新機種への変更・導入を決定しました。
https://jp.medical.canon/products/ultrasound/aplio_averifia
その3 予定
木曜日をかかりつけ患者さんのための動脈硬化症関連の健診日に当てようと考えています。
高血圧・糖尿病・心不全などの循環器疾患の患者さんがなかはら内科クリニックには多数いらっしゃいます。
特に動脈硬化症の進展や循環器疾患にかかりやすい患者さんを対象にまとまった検査日を
予約制
として設けます。
2023/07/16
再掲:夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防と高血圧管理の観点から:再掲
本格的な夏の到来です。
メディアで「熱中症予防のために塩分摂取を!」という内容を目にすることがあります。
しかし、日本人の食塩摂取量は平均1日10グラム程度で,1日における塩分必要量をはるかに超えています。
高血圧の人は,原則として夏でも適切な減塩が必要で,1日6グラム未満が望まれます。
血圧が正常な人も高血圧の人も,水分は十分に摂ることが望まれます。環境省の熱中症予防情報サイトでは,1日当たり1.2リットルを目安としたこまめな水分補給を推奨しています。
詳しくは、日本高血圧学会のHPをご参照ください!
https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
ttps://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000205703.pdf
水分摂取量の目安
2023/05/17
高血圧の日・世界高血圧デーです。
5月7日は高血圧の日・世界高血圧デーです。
高血圧が日本では約4300万人いると言われております。
こういう日だからこそ、一度、血圧を振り返ってみましょう!
https://www.jpnsh.jp/general_0517.html
なかはら内科クリニックは高血圧専門クリニックでもあります。
患者さんのみならず、地域の方々への啓蒙活動や、医師同士の高血圧に対しての理解をお互い深める活動をしております。
本日はその一環として、講演会の座長をしてきます。
2023/02/27
転居に伴う医師・医療施設探し
なかはら内科クリニックです。
もう直ぐ春を迎え、新生活の季節になります。
それに伴い転勤・転居で当院から他施設に紹介する機会も増えてきました。
折角、いい関係になれたのに、本当に寂しい季節です。
転居先の医療施設探しにみなさん苦慮されているようです。
知り合いに紹介できればそれに越したことはないのですが、遠方であるとそうはいきません。
一緒に、ホームページを参考に探すこともあります。
ネットの口コミって意外と当てにならないもので、この業界では平均3.5に落ち着くと言われております。なので、それよりも高いとか、低すぎるといろいろ感じるものがあります。
家族や会社友人などの知り合いからの紹介の方が実は良かったりしますよね。
以前も書きましたが、クリニックはいろいろ標榜しておりますが、実はその病気の専門医ではないことが多々あります。
転居後、最終的に医師患者関係の折り合いの合うところに落ち着くのですが、
最初に行くべき医療施設の提案をしたいと思います。
それぞれクリックするとリンクに接続します。
・高血圧・脂質異常症・カテーテル治療後・不整脈であれば
・高血圧であれば
・糖尿病・糖代謝異常・肥満症・脂質異常症であれば
・逆流性食道炎・胃大腸ポリープ・肝機能障害であれば
・甲状腺疾患、内分泌疾患・脂質異常症であれば
・脳梗塞・脳出血後、パーキンソン、頭痛であれば
・内科一般であれば
2023/02/04
これって脳梗塞?
以前、朝の血圧上昇は脳梗塞・心筋梗塞の危険因子であるというお話をしました。
これに関連して、これって?大丈夫?脳梗塞なの?というお話をしようと思います。
みなさん、
「FAST(ファスト)」
という言葉はご存知でしょうか?
これは脳梗塞の症状を示唆する大切なサインです。
Fは、「face:顔」 顔の左右の半分が動かなくなって、口元が下がってくる。イーという表情をしても、左右半分の口角のシワがない。おでこにシワを寄せようとしても、片方はシワがよらない。
Aは、「arm:腕」 体の片方の手足が動かない、力が入らない。前へならえの姿勢で腕が下がってしまう。
Sは、「speech:発語」 話そうとしても呂律(ろれつ)が回らない、らりるれろ、パピプペポ、るりもはりもてらせばひかるが言えない。言葉がでない。
Tは、「time:時間」 これらの症状に気づいたら、すぐに受診する!
です。
朝起きて、あれ?なんか変だぞと本人、もしくはご家族が気づかれるかもしれません。
でも、もう少し様子を見てみようと半日様子を見てしまいがちです。
もし、脳梗塞の症状であるならば、発症後6時間以内であれば脳血管治療を受けることができ、その後に残るであろう麻痺症状を比較的軽度にとどめることが可能になります。
つまり、もう少し様子を見てみようは症状が続くのであれば数時間までと決めて、迷うようなら医療機関に相談する方が宜しいと思います。
また、
一過性脳虚血発作:TIA(Transit Ischemic Attack)
といって、一時的に脳に血流が流れなくなって、手足のしびれやまひなどが短時間で現れて消える状態があります。
例えば、一瞬、体の力が抜けたが数分でよくなった。といった症状が起きたら、24~48時間以内に大きな脳卒中が起きる警告発作かもしれません。
なので、症状が軽快したからいいと考えず、持病に高血圧・脂質異常症・糖尿病や喫煙といった動脈硬化症の危険因子があれば1-2日は用心した方がいいと思います。
ご自身が、動脈硬化症に伴う脳血管疾患に罹患しやすいかを計算することができるサイトが
にございます。
ぜひ、ご活用くださいませ。
2023/01/28
生活習慣病の治療中断による再出発(再治療):再掲と追記
今月になり、昨年春から夏を最後に未受診となって、症状・病態悪化で再受診となる患者さんが多くいらっしゃいました。
実は、当院は3ヶ月以上の未受診患者さんのリストを作成し、院長の私はご連絡しようかと、いつも悩みながらリストをみています。
受診する・しない、は患者さん個人の選択なので、強制的に受診させるような権限はございません。
でも、血圧コントロールのために必要な血圧の薬を飲まずにそのまま過ごすと、高齢になればなるほど心不全や脳出血、腎疾患(腎臓は一度機能が低下すると元に戻りにくいです。)などの重篤な状態に陥る頻度が高まります。また、糖尿病という病態も同様に、定期的なメンテナンスをしないと症状が出た時はそれなりの状態になっている事があります。
過去に生活習慣病の治療中断による再出発という記事を書きました。
将来のご自身のために、啓発という意味も込めて、再掲しようと思います。
ここ最近、
以前治療していたが、引越しや転勤、コロナ不安、もういいかなという心情で継続治療を中断し、検診などで悪化を指摘され再受診となる患者さんが増えてきています。
医療者は患者さんが継続通院しなくなることをlost follow(ロストフォロー)と言います。
特に、糖尿病、甲状腺疾患、高血圧は症状が悪化するまで病状進行に気が付きにくいため、lost followになってしまうと腎機能や心機能の悪化などの合併症が生じてしまっていることが多々見受けられます。
再治療は患者さん自身、そしてわれわれ医療者にも大きな負担(精神的にも、時間的にも、費用的にも)となります。
継続治療は高齢化社会において、いかに臓器を若々しく保たせ、自分らしく生活するために必要なことの一つです。
もう直ぐ春になると転居/転勤の時期になります。どうぞ、lost follow せず継続治療を行ってください。
厚生労働省と日本糖尿病協会が協力して制作した糖尿病啓発冊子 「糖尿病の治療を放置した働き盛りの今」という冊子があります。不安を刺激して通院してもらおうということではありません。自分の健康に目を向けて頂きたいという気持ちです。
https://www.nittokyo.or.jp/uploads/files/enlightenment_2020.pdf
数十年後の自分を想像しながら継続治療を行っていただければと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=BfV8ttQYElA
©医療法人社団ミネルバ なかはら内科クリニック