脂質異常症について:治療編

2024/05/04

脂質異常症について:治療編

先日、サプリメントで悪玉コレステロールを下げる効果を謳っている、紅麹コレステヘルプが腎機能障害が出るとことで問題になりました。
医療者からの院長からすると、なぜ患者さんは医師からの処方薬は服用することに抵抗を示して、厚労省ではなく、消費者庁が管轄している機能性表示食品のようなサプリメントに手を出してしまうのだろうとジレンマを感じながら報道を聞いていました。

この問題の一つに、きっと、医師がきちんと患者に説明をして、理解をしてもらって安心して内服してもらえていないことが背景にあるのだろうと考えます。


当院の患者さんでも自己中断される方、通院自体をやめてしまう方が一定数いらっしゃいます。我々,医療者が、患者さんにとって本当に必要がということを十分に伝わっていなかったためと思います。
いつか、脂質異常症治療薬として世界的に一番使用されているスタチンの歴史についてブログで取り上げようと思いますが、

今回は一般的に動脈硬化性疾患の既往のない患者さんの脂質異常症の標準的な治療(一次予防)について記載しようと思います。
(ガイドラインに基づいて記載しています。)

日本循環器学会 ガイドライン

日本動脈硬化学会ガイドライン

なかはら内科クリニックは、処方薬は極力出さないクリニックです。生活習慣病というくらいですから、生活習慣改善が第一だからです。それでも、数値が改善しない場合、薬剤の介入が必要となります。

LDL高値の場合、患者さんになかはら内科ではざっくり次のように説明します。
食事・運動で低下するであろうLDLは約10〜15%と言われています。
生活習慣のどこに問題があるのか?食事なのか?運動なのか?
食事なら糖質摂取が多いのか?脂質摂取が多いのか?
生活習慣改善でも、目標LDLに達していない場合は、スタチンを主に処方します。
スタチンにより約40〜50%程度LDLを低下することができます。

患者さんの目標LDLはその患者さんの病態により決まります。

それでは、ガイドラインを見ながら理解を深めていきましょう。

なかはらクリニックでは、まず、患者さんが脳血管疾患になりやすいかを以下のように評価します。
患者さんも、日本動脈硬化学会からの簡易計算でご自身の脳梗塞・心筋梗塞のなりやすさを計算することができます。確認してみてください。

https://www.j-athero.org/general/gl2022app/general.html


例えば、58歳 男性 高血圧(144/88) 糖尿病予備軍(境界型糖尿病) 喫煙ありの患者さんが健診で脂質異常症(LDL166,HDL48, TG250)を指摘されて来院したとします。
この患者さんの58歳〜68歳までの動脈硬化性疾患発症リスクは 7.9%となり、同年齢・同性で最もリスクの低い人と比べて4.2倍発症の可能性が高くなります。
もし、この患者さんがタバコを吸っていなかったら、発症リスクは6.0%で 1.9%も喫煙でのリスクが軽減されていたことになります。ちなみに、スタチン使用でのリスク軽減は-2%なので、ほとんど、薬と禁煙は同程度の改善効果ということがお分かりになると思います。
なので、薬を使用するくらいなら、タバコをやめましょう!と外来で伝えているのはこのためです。

喫煙による寿命の話は別のブログで記載しているので、興味のある方はお読みください。

では、LDLの治療目標はどうでしょうか?

先ほどの患者さんに当てはめると、目標LDLは<140となります。2-3ヶ月後に評価をして、食事療法・運動療法頑張ったのに、それでもLDL<140に到達しない場合、

ここでやっと、内服薬の登場ということになります。
治療薬の概略は以下に示しますが、今度、作用機序の詳細を記載しますね。


先ほど述べましたが、スタチンで約40〜50%LDLが低下します。よく、週刊誌や怪しいネットで医者が処方する薬で筋肉が溶けるなど不安を煽る情報を載せていますが、頻度は非常にまれで、自分の患者でも横紋筋融解症を経験したことのない医師もいると思います。

家族性高コレステロール血症の患者さんは一次予防の目標LDLは<100となります。

急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、アテローム血栓性脳梗塞のいずれかを合併する 冠動脈疾患の二次予防(再発予防)では、LDL コレステロール 70 mg/dL 未満を目標に薬物療法を実施することを 推奨する。となっています。

注意: 当記事は患者さんへの理解していただく事を優先としている為、薬の細かな作用機序や例外事項などは省略しております。


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