なんで高血圧じゃないのに高血圧の薬?なんで糖尿病じゃないのに糖尿病の薬?一剤2役!3役!複数の効果を示す薬剤について

2024/07/14

なんで高血圧じゃないのに高血圧の薬?なんで糖尿病じゃないのに糖尿病の薬?一剤2役!3役!複数の効果を示す薬剤について

ときどき、他院通院中の患者さんが患者さんご自身のかかりつけクリニックで処方されている薬について相談のために、糖尿病・高血圧専門クリニックである なかはら内科クリニックに来院されます。

なんで高血圧じゃないのに高血圧の薬なんですか?
なんで糖尿病じゃないのに糖尿病の薬なんですか?

処方箋を持参し薬局に行くと、薬剤師から色々説明を聞いたり、薬剤情報説明書を見て、あれ?自分は高血圧ではないのにとか、糖尿病じゃないのにと感じて不安になり相談になることが多いです。

きっと、かかりつけの先生の説明不足かなかなか伝わりづらいことが原因なのでしょう。
当院かかりつけ患者さんでもたまにこのようなエピソードがあります。
説明しているつもり。。なのですが。反省。。
今日は一剤2役!3役!複数の効果を示す薬剤について説明しようと思います。

<高血圧のくすり>

ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

1. 高血圧治療:

  • 効果: 血管を拡張させることで血圧を下げます。
  • メカニズム: アンジオテンシンIIという血管を収縮させる物質の生成を阻害します。

2. 腎保護作用:

  • 効果: 腎臓の機能を保護し、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があります。
  • メカニズム: 血圧や糸球体内圧を下げることで腎臓への負担を軽減し、さらに腎臓の血流を改善します。

3. 慢性心不全:

  • 効果: 心臓のリモデリング(心臓の形状や機能の変化)を防ぎ、心不全の症状を改善します。
  • メカニズム: 血圧の低下と共に、心臓の負担を軽減し、心筋の保護効果があります。

ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)

1. 高血圧治療:

  • 効果: 血圧を下げます。
  • メカニズム: アンジオテンシンIIが受容体に結合するのを阻害し、血管を拡張させます。

2. 腎保護作用:

  • 効果: 慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があります。
  • メカニズム: 血圧や糸球体内圧を下げることで腎臓への負担を減少させ、腎機能を保護します。

3. 慢性心不全:

  • 効果: 心臓のリモデリングを防ぎ、心不全の症状を改善します。
  • メカニズム: 血圧の低下と共に、心臓の負担を軽減し、心筋の保護効果があります。

まとめ

ACE阻害薬とARBは、単に高血圧を治療するだけでなく、腎臓や心臓の保護にも役立つ薬です。これにより、患者さんの全体的な健康状態を改善し、重篤な合併症のリスクを減少させることができます。

その他

β遮断薬(ベータブロッカー)

  • 主な作用: 心拍数を下げ、心筋の酸素需要を減少させることで、狭心症や心不全、高血圧の治療に使用されます。
  • その他の作用: 一部のβ遮断薬は、不整脈の予防や治療にも有効です。

カルシウム拮抗薬

  • 主な作用: 血管を拡張させ、血圧を下げます。また、狭心症の症状を緩和します。
  • その他の作用: 一部のカルシウム拮抗薬は、不整脈の治療にも使用されます。

<糖尿病のくすり>

SGLT2阻害薬(ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬)

1. 糖尿病治療:

  • 効果: 血糖値を下げます。
  • メカニズム: 腎臓でのグルコースの再吸収を阻害し、尿中に排泄されるグルコース量を増やすことで血糖値を下げます。

2. 体重減少:

  • 効果: 体重を減少させる効果があります。
  • メカニズム: 尿中に排泄されるグルコースに伴いカロリーが失われるため、体重が減少します。

3. 心血管保護作用:

  • 効果: 心不全のリスクを低減し、心血管系の健康を改善します。
  • メカニズム: 血糖値の管理に加え、利尿作用による体液量の減少と血圧の低下が心血管系に良い影響を与えます。

4. 腎保護作用:

  • 効果: 腎臓病の進行を遅らせ、腎機能を保護します。
  • メカニズム: 血糖値と血圧の管理による腎臓への負担軽減に加え、直接的な腎臓保護効果もあります。

まとめ

SGLT2阻害薬は、主に糖尿病の治療薬として開発されましたが、以下のような多くの有益な効果があります。

  • 血糖値を効果的に管理
  • 体重減少効果
  • 心血管保護
  • 腎保護

これらの効果により、糖尿病患者さんの全体的な健康状態を改善し、重篤な合併症のリスクを減少させることができます。

GLP-1作動薬(グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬)

1. 糖尿病治療:

  • 効果: 血糖値を下げます。
  • メカニズム: GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事後に腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制します。また、胃の排出を遅らせ、食後の血糖値の急上昇を防ぎます。

2. 体重減少:

  • 効果: 体重を減少させる効果があります。
  • メカニズム: 食欲を抑制し、摂取カロリーを減少させることにより体重が減少します。

3. 心血管保護作用:

  • 効果: 心血管イベント(心臓発作や脳卒中など)のリスクを低減します。
  • メカニズム: 血糖値の管理に加えて、体重減少や血圧の低下、脂質プロファイルの改善が心血管リスクの低減に寄与します。

4. 使いやすさ:

  • 特徴: 多くのGLP-1作動薬は週に一度の注射で効果が持続するため、投薬管理が比較的容易です。

具体例:セマグルチド

セマグルチドは、GLP-1作動薬の一つで、糖尿病の治療に広く使用されています。以下にその主な効果をまとめます。

  • 血糖値管理: 食後の血糖値上昇を抑え、全体の血糖値を安定させます。
  • 体重減少: 食欲を抑制し、体重管理に役立ちます。
  • 心血管保護: 心血管イベントのリスクを減少させる効果があります。

まとめ

GLP-1作動薬、特にセマグルチドは、糖尿病治療だけでなく、体重管理や心血管リスクの低減にも有効です。週に一度の投与で効果を発揮するため、患者さんの負担も軽減されます。

マンジャロ(チルゼパチド)の効果と特徴

1. 血糖値管理

  • 効果: 血糖値を効果的に下げます。
  • メカニズム: チルゼパチドはGLP-1とGIPの受容体を同時に刺激し、インスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制します。これにより、食後の血糖値の上昇を抑え、全体的な血糖コントロールを改善します。

2. 体重減少

  • 効果: 体重を減少させる効果があります。
  • メカニズム: 食欲を抑制し、摂取カロリーを減少させることで体重を減少させます。また、エネルギー消費を増加させる作用もあるとされています。

3. 心血管保護

  • 効果: 心血管イベント(心臓発作や脳卒中など)のリスクを低減します。
  • メカニズム: 血糖値の改善に加え、体重減少、血圧の低下、脂質プロファイルの改善が心血管リスクの低減に寄与します。

4. 使用方法

  • 特徴: マンジャロは通常、週に一度の注射で投与されます。これは患者さんの薬物管理を容易にし、投与頻度の低さが治療の継続性を高めます。

まとめ

マンジャロ(チルゼパチド)は、2型糖尿病の管理において非常に有望な薬剤です。血糖値の効果的なコントロールに加え、体重減少効果や心血管保護作用も持っております。心血管イベント抑制効果や腎保護効果についての報告は少ないですが、血糖改善や体重改善の効果から、これらの効果も期待できると考えられています。体重減少効果や心血管保護作用も持っており、総合的な健康改善に寄与します。週に一度の投与で効果を発揮するため、患者さんの負担も軽減されます。


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