AIが医療にもたらす「光と影」―講演会の座長を務めました
2026/09/17
AIが医療にもたらす「光と影」―講演会の座長を務めました
先日、聖マリアンナ医科大学の 野田竜之介 先生をお招きして「AIが医療にもたらす光と影」をテーマとした講演会に、帝京大学溝口病院 の鈴木教授とともに座長として参加しました。
生成AIの進歩は目覚ましく、医療の世界でも診断のサポート、検査データの解析、診療内容の要約、患者さんへの説明資料の作成など、さまざまな活用が期待されています。
今回の講演を聞いて改めて感じたのは、
AIは医師にとっても患者さんにとっても非常に便利な道具ですが、その答えを鵜呑みにしてはいけない
ということです。
日常診療で期待されるAIのメリット
医療現場では、病歴・検査結果・画像など多くの情報を整理したり、鑑別診断を考える際の補助として利用したり、患者さんへの説明をわかりやすい文章にしたりすることができます。
AIに事務的な作業や情報整理を手伝ってもらうことで、医師が患者さんと直接向き合う時間を増やせる可能性もあります。
将来的には、さまざまな医療情報を統合して医師の意思決定を支援するAIも期待されています。
AIは自信満々に間違えることがある
一方で、大きな注意点があります。
AIの回答は、必ずしも正しいとは限りません。
今回の講演でも、生成AIは不確実な状況でも断定的な回答をする傾向があり、さらに質問する人の意見に合わせて、もっともらしい誤情報を作ってしまうことが紹介されました。
文章が自然で説明も上手なので、間違っていても「正しそう」に見えてしまうことが、医療でAIを利用する際の大きな問題です。
患者さんがAIに症状を相談するときに気をつけてほしいこと
最近は、
「胸が痛いけれど、何の病気でしょうか?」
「この検査値は大丈夫ですか?」
「この薬は飲まなくてもいいですか?」
など、ご自身の症状や検査結果を生成AIに相談する方も増えていると思います。
AIを使って病気について調べたり、診察前に自分の症状を整理したりすること自体は、とても便利な使い方です。
しかし、AIによる診断を医師の診断の代わりにすることはお勧めできません。
実際の診療では、症状だけでなく、診察所見、血圧や脈拍、検査結果、画像、これまでの病歴、服用している薬などを総合して判断します。AIとの文章上のやり取りだけでは、それらを十分に評価できない場合があります。
特に、AIから「心配ありません」と言われたから受診しない、あるいはAIの回答をもとに自己判断で薬を中止・変更するといった使い方には注意が必要です。
AIは「診断してもらう相手」ではなく、「自分の症状や疑問を整理して、医師に相談するための補助ツール」として使う。
現時点では、このくらいの距離感がよいのではないかと思います。
AIと上手に付き合う医療へ
講演では、AIの答えそのものを「吟味すべきエビデンス」として考える、という印象的な考え方も紹介されました。AIの回答が医学的に妥当なのか、目の前の患者さんに当てはまるのか、そして患者さん自身の希望や価値観に合っているのかを考えることが重要です。
これは医師だけでなく、患者さんがAIを利用するときにも大切な考え方だと思います。
AIには、医療をより便利で質の高いものにする大きな可能性があります。しかし、
「AIが言っているから正しい」わけではありません。
AIにすべてを任せるのではなく、AIを上手に利用しながら、最後は患者さんと医療者が一緒に考えて判断する。
今回の講演を通じて、そんなAIとの付き合い方が、これからの医療ではますます大切になると感じました。

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