先日、聖マリアンナ医科大学の 野田竜之介 先生 をお招きして「AIが医療にもたらす光と影」をテーマとした講演会に、帝京大学溝口病院 の鈴木教授とともに座長として参加しました。
生成AIの進歩は目覚ましく、医療の世界でも診断のサポート、検査データの解析、診療内容の要約、患者さんへの説明資料の作成など、さまざまな活用が期待されています。
今回の講演を聞いて改めて感じたのは、
AIは医師にとっても患者さんにとっても非常に便利な道具ですが、その答えを鵜呑みにしてはいけない
ということです。
日常診療で期待されるAIのメリット
医療現場では、病歴・検査結果・画像など多くの情報を整理したり、鑑別診断を考える際の補助として利用したり、患者さんへの説明をわかりやすい文章にしたりすることができます。
AIに事務的な作業や情報整理を手伝ってもらうことで、医師が患者さんと直接向き合う時間を増やせる可能性もあります。
将来的には、さまざまな医療情報を統合して医師の意思決定を支援するAIも期待されています。
AIは自信満々に間違えることがある
一方で、大きな注意点があります。
AIの回答は、必ずしも正しいとは限りません。
今回の講演でも、生成AIは不確実な状況でも断定的な回答をする傾向があり、さらに質問する人の意見に合わせて、もっともらしい誤情報を作ってしまうことが紹介されました。
文章が自然で説明も上手なので、間違っていても「正しそう」に見えてしまうことが、医療でAIを利用する際の大きな問題です。
患者さんがAIに症状を相談するときに気をつけてほしいこと
最近は、
「胸が痛いけれど、何の病気でしょうか?」 「この検査値は大丈夫ですか?」 「この薬は飲まなくてもいいですか?」
など、ご自身の症状や検査結果を生成AIに相談する方も増えていると思います。
AIを使って病気について調べたり、診察前に自分の症状を整理したりすること自体は、とても便利な使い方です。
しかし、AIによる診断を医師の診断の代わりにすることはお勧めできません。
実際の診療では、症状だけでなく、診察所見、血圧や脈拍、検査結果、画像、これまでの病歴、服用している薬などを総合して判断します。AIとの文章上のやり取りだけでは、それらを十分に評価できない場合があります。
特に、AIから「心配ありません」と言われたから受診しない、あるいはAIの回答をもとに自己判断で薬を中止・変更するといった使い方には注意が必要です。
AIは「診断してもらう相手」ではなく、「自分の症状や疑問を整理して、医師に相談するための補助ツール」として使う。
現時点では、このくらいの距離感がよいのではないかと思います。
AIと上手に付き合う医療へ
講演では、AIの答えそのものを「吟味すべきエビデンス」として考える、という印象的な考え方も紹介されました。AIの回答が医学的に妥当なのか、目の前の患者さんに当てはまるのか、そして患者さん自身の希望や価値観に合っているのかを考えることが重要です。
これは医師だけでなく、患者さんがAIを利用するときにも大切な考え方だと思います。
AIには、医療をより便利で質の高いものにする大きな可能性があります。しかし、
「AIが言っているから正しい」わけではありません。
AIにすべてを任せるのではなく、AIを上手に利用しながら、最後は患者さんと医療者が一緒に考えて判断する。
今回の講演を通じて、そんなAIとの付き合い方が、これからの医療ではますます大切になると感じました。
2026年度 高齢者インフルエンザ予防接種のお知らせ
なかはら内科クリニックでは、川崎市の高齢者を対象とした定期インフルエンザ予防接種 を実施します。
インフルエンザワクチンは、感染や発症を完全に防ぐものではありませんが、発症や重症化、合併症を予防する効果 が期待できます。
ワクチン接種後、効果が現れるまでには約2週間かかり、その効果は約5か月持続するとされています。
対象となる方
川崎市に住民登録があり、次のいずれかに該当する方が対象です。
① 接種日に65歳以上の方
② 接種日に60~64歳で、次のいずれかに該当する方
心臓・腎臓・呼吸器の機能に、身体障害者手帳1級程度の障害がある方
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能に、身体障害者手帳1級程度の障害がある方
接種期間
2026年9月24日(木)~2027年1月31日(日)
期間中に1回 接種できます。
川崎市の状況により、接種開始日を前倒し,当院では9月25日から開始いたします。
自己負担額
2,300円(税込)
接種時に医療機関でお支払いください。
自己負担金が免除される方
次のいずれかに該当する方は、接種時に所定の証明書類を提示することで、自己負担金が免除されます。
生活保護世帯の方
市・県民税非課税世帯の方(世帯全員が非課税の場合)
中国残留邦人等に対する支援給付の対象となっている方
免除を受けるために必要な書類
次のいずれか1点を接種時にご提示ください。
最新の生活保護決定通知書または被保護証明書
最新の介護保険料納入通知書(保険料段階が第1~第4段階のもの)
中国残留邦人等に対する支援の本人確認証(受給期間に接種日が含まれるもの)
中国残留邦人等に対する支援給付受給証明書(受給期間に接種日が含まれるもの)
※「非課税証明書」は、世帯全員が非課税であることを確認できないため、免除の証明書類として使用できません。
※予防接種のための介護保険料納入通知書の再発行は行われません。
※一度お支払いいただいた自己負担金は返金されません。免除対象の方は、必ず接種時に証明書類をお持ちください。
接種をご希望の方へ
高齢者を対象としたインフルエンザ定期予防接種は、法律上の接種義務はありません。接種による効果や副反応などをご理解いただいたうえで、ご本人が希望する場合に接種を受けていただきます。
ご不明な点がございましたら、なかはら内科クリニックまでお問い合わせください。
健診の尿検査、見逃していませんか?慢性腎臓病について
―蛋白尿が教えてくれる、あなたの未来―
先日、院長の岸が「IMAGINE Project 講演会 ~地域で取り組むCKD~ 」という、川崎市の内科医が多数参加する講演会にお招きいただき、
「蛋白尿が教えてくれる未来 ―CKDと心血管イベントを防ぐために― 」というテーマでお話しさせていただきました。
この講演会は川崎市中原区医師会が主催し、川崎市医師会・日本腎臓病協会などが共催する、地域のかかりつけ医向けの勉強会です。
「健診の尿検査をどう日常診療に活かすか」「かかりつけ医と腎臓の専門医がどう連携するか」といったテーマで、地域の先生方と一緒に考える時間になりました。
今日はこの講演会でお話しした内容を、患者さんにも知っていただきたいので、できるだけわかりやすくご紹介したいと思います。
「健診で尿蛋白を指摘されたけれど、症状もないし大丈夫だろう」と思っている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
そもそも「蛋白尿」ってなに?
私たちの腎臓は、血液をろ過して余分な老廃物を尿として排出し、体に必要なタンパク質は体の中に残す、精密なフィルターのような働きをしています。
ところが腎臓のフィルター機能に負担がかかると、本来は体に残るはずのタンパク質(アルブミンなど)が、少しずつ尿に漏れ出てくるようになります。これが「蛋白尿」です。
蛋白尿は、量が少ないうちはまったく自覚症状がありません。「症状がないから大丈夫」と思われがちですが、実はここが一番大切なポイントです。
蛋白尿は、将来の腎臓と心臓の健康状態を、症状が出るずっと前から教えてくれるサイン なのです。
健診結果の「-」「±」「1+」、それぞれどんな意味?
健診の尿検査の結果は、次のように区分されています。
- / ±
正常範囲、または軽度 まずは経過観察でよい段階
1+
軽度〜中等度の蛋白尿 一度、詳しい検査をおすすめする段階
2+以上
高度な蛋白尿 できるだけ早く相談してほしい段階
ポイントは、「±」が1回だけ出た場合はあまり心配いりませんが、2年連続で「±」が続く場合や、「1+」以上が出た場合は、一度きちんと調べることをおすすめします 。
このとき、試験紙の検査だけでなく、尿を採って「尿蛋白/クレアチニン比」という、より正確な数値を測る検査(採血のような特別な準備は不要で、通常の尿検査と同じように提出いただけます)を追加することで、体の状態をより正確に把握できます。
実は、腎臓と心臓は「つながって」います
「蛋白尿は腎臓だけの問題」と思われがちですが、実際には腎臓と心臓は密接に影響し合っています。これを「心腎連関」と呼びます。
腎臓の機能が少しずつ落ちてくると、体に余分な水分や塩分がたまりやすくなったり、血圧のコントロールに関わるホルモンのバランスが崩れたりします。
これらが積み重なることで、心臓に負担がかかり、動脈硬化や心不全のリスクが上がっていくことが、大規模な研究で分かっています。
つまり蛋白尿は、腎臓からの注意信号であると同時に、心臓や血管からの「そろそろ気をつけて」というサイン でもあるのです。
早めに気づけば、対策できます
ここでお伝えしたいのは、悲観的な話ではなく、むしろ希望のある話です。
実際に、腎臓を保護するお薬(血圧のお薬の一種や、もともと糖尿病治療薬として開発されたお薬など)を使うことで、腎臓の機能低下や心臓の病気を防げることが、世界的な大規模研究で示されています。
大切なのは、「症状がないから」と先延ばしにせず、蛋白尿が見つかった時点で早めに対策を始めること です。生活習慣の見直し(塩分を控える、体重管理、禁煙など)と合わせて、必要に応じてお薬による治療を組み合わせることで、将来のリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
蛋白尿は、症状が出るずっと前から腎臓と心臓の将来のリスクを教えてくれるサイン
健診で「1+」以上、または「±」が2年連続で出た場合は、一度詳しい検査を受けましょう
腎臓と心臓はつながっており、早めの対策が両方を守ることにつながります
気になる結果が出た方、健診結果をお持ちいただければ、当院で詳しい検査(尿蛋白の定量検査など)についてご相談いただけます
「これくらい大丈夫だろう」と自己判断せず、気になる結果があれば、ぜひ一度ご相談ください。
🏥 監修者情報
監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)
日本専門医資格
認定内科医
総合内科専門医(指導医)
高血圧専門医
糖尿病専門医
循環器専門医
脈管専門医
認定産業医
糖尿病認定医
国際フェロー
FACP(米国内科学会)
FAHA(米国心臓協会)
FACC(米国心臓病学会)
FESC(欧州心臓病学会)
FSCCT(心臓CT学会)
🏢 クリニック情報
なかはら内科クリニック
〒211-0041 神奈川県川崎市中原区下小田中3丁目30番地3号
JR南武線・武蔵中原駅より徒歩12分 武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアからの通院も可能です
一般内科・循環器内科・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)を中心に、地域のかかりつけ医として診療しております。健診結果で気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
📚 出典
日本腎臓学会編. CKD診療ガイド2024. 東京医学社, 2024.
日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
Matsushita K, et al. Lancet. 2010;375:2073-81.
Matsushita K, et al. Nat Rev Nephrol. 2022;18:696.
Herrington WG, et al. N Engl J Med. 2023;388:117.(EMPA-KIDNEY試験)
2026 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease and chronic kidney disease. Eur Heart J.
IMAGINE Project 講演会 ~地域で取り組むCKD~(2026年9月11日, 主催:川崎市中原区医師会)講演資料
2026年度 インフルエンザワクチン接種のご案内(早期任意接種)
日頃より、なかはら内科クリニックをご利用いただき誠にありがとうございます。
当院では、2026年9月15日(火)より 、今年度のインフルエンザ任意予防接種を開始いたします。本格的な流行期を迎える前の早期接種をおすすめしております。
※当院はインボイス制度対応の領収書を発行しております。
■ 接種料金・ワクチンの種類
ご希望や体質・ご年齢に合わせて各種ワクチンをご用意しております。
ワクチンの種類
対象・特徴
料金(税込)
従来のインフルエンザワクチン (皮下注射)
一般向け ※6歳以上13歳未満で2回接種が必要な方
3,800円 (当院2回目:3,500円)
フルービックHA (防腐剤[チメロサール]不使用・皮下注射)
妊婦の方、小さなお子様、過去にワクチン等でアレルギー反応が出た方におすすめです。
4,500円
経鼻インフルエンザワクチン (フルミスト®・鼻スプレー)
6歳(小学生)以上19歳未満 ※注射ではなく鼻腔内にスプレーするタイプの生ワクチンです(1回接種)。
9,000円 (要予約・数量限定)
フルミスト®(経鼻スプレー)の特徴
注射針を使わないため接種時の痛みがほとんどなく、注射が苦手なお子様にもおすすめです。また効果の持続期間についても、従来の注射型ワクチンが接種後おおむね4〜6か月程度とされるのに対し、フルミスト®は6〜12か月程度持続する可能性が報告されており、比較的長く効果が続くと考えられています。
なお、従来型ワクチンを2回接種される場合の合計料金は7,300円(初回3,800円+2回目3,500円)となり、フルミスト®(9,000円)との差額は1,700円です。痛みが少なく、効果の持続期間が長いことを考えますと、差額以上のメリットがあると言え、特に受験を控えたお子様には、当院としてもフルミスト®をお勧めしております。
■ ご予約・ご来院について
皮下注射(従来型・フルービックHA): 【予約不要】 事前予約は不要です。体調の良い日に直接ご来院ください。
フルミスト®(経鼻スプレー): 【事前予約制】 入荷数に限りがあるため、事前にお電話または受付窓口でのご予約が必要となります。
■ ご来院時のお願い・注意事項
当日は、健康保険証・マイナ保険証、(お持ちの方は)診察券をご持参ください。
予診票の記入などがございますので、受付終了時間の30分前までにお越しいただきますようご協力をお願いいたします。
37.5℃以上の発熱がある場合や、著しく体調が優れない場合は接種を見合わせていただく場合がございます。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽に当院までお問い合わせください。
安全・安心なワクチン接種のため、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
🏥 監修者情報
監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)
日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 認定総合内科専門医(指導医)
日本高血圧学会 認定高血圧専門医
日本糖尿病学会 認定糖尿病専門医
日本循環器学会 認定循環器専門医
日本脈管学会 認定脈管専門医
日本医師会 認定産業医
日本糖尿病協会 糖尿病認定医
Fellow of the American College of Physicians(FACP)
Fellow of the American Heart Association(FAHA)
Fellow of the American College of Cardiology(FACC)
Fellow of the European Society of Cardiology(FESC)
Fellow of the Society of Cardiovascular Computed Tomography(FSCCT)
🏢 クリニック情報
なかはら内科クリニック
JR南武線「武蔵中原駅」から通院しやすい立地にあり、武蔵小杉・元住吉エリアからもアクセス良好です。
川崎市中原区を中心に、武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアなど、幅広い地域の患者様にご来院いただいております。
内科全般に加え、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や、動悸・胸痛など循環器疾患の診療にも対応しております。
Tel:044-797-5556/Fax:044-873-8611
URL:http://nakahara-naika.com/
9月木曜日診療日のお知らせ
こんにちは。武蔵中原・武蔵小杉・元住吉エリアの皆様の健康に寄り添う、かかりつけ医の医療法人社団ミネルバ なかはら内科クリニック です。
9月の木曜診療体制および動脈硬化症関連の検査日についてお知らせいたします。
🗓 9月の木曜診療日
9月3日(木)
9月10日(木)
9月17日(木)
⏰ 木曜午前:完全予約制(定期診療・動脈硬化症関連の検査)
木曜日の午前中は完全予約制(電話・窓口予約) とさせていただいております。通常の定期診療に加え、当院をかかりつけ医としてご利用いただいている患者様を対象とした「動脈硬化症関連の検査日」となっております。
糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病は、自覚症状がないまま血管を傷つけ、進行すると心臓病(心筋梗塞・狭心症)や脳卒中といった命に関わる重大な病気(動脈硬化)を引き起こします。
こんな方にお勧めです:
糖尿病や高血圧を指摘されており、血管の状態が心配な方
将来の心臓病・脳血管疾患を予防したい方
武蔵中原・武蔵小杉周辺で動脈硬化の詳しい検査ができる内科をお探しの方
ぜひこの機会に定期的な検査をご検討ください。お気軽にご相談・ご予約ください。
⚠️ 【重要】木曜日は感染症外来を行っておりません
木曜日は検査および糖尿病・高血圧・脂質異常症・心臓病などの定期慢性疾患の診療に特化しているため、発熱外来を含む感染症外来の受付は行っておりません。
風邪症状や発熱のある患者様は、大変恐れ入りますが他の曜日にお問い合わせいただくか、近隣の医療機関をご受診いただきますよう、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
武蔵小杉駅・武蔵中原駅・元住吉駅周辺からアクセスしやすい当院では、地域の皆様の生活習慣病予防や心血管の健康維持に力を入れています。体調管理や検査に関するご不安がございましたら、まずはお気軽にお電話にてご予約ください。
HPVワクチン「シルガード9」を徹底解説 ― 子宮頸がん予防だけじゃない、男性にも
こんにちは。武蔵中原駅から徒歩12分、なかはら内科クリニック院長の岸です。当院には武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアにお住まいの方から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてのご相談を多くいただきます。今回は、当院でも自費で受けていただける「シルガード9」について、どれくらい効果があるのか、男性にも意味があるのか、そして料金や公費の対象についても、できるだけわかりやすくまとめてご紹介します。
この記事のポイント
シルガード9は、いま使えるワクチンの中で一番多くの種類のHPVを防げるワクチンです
子宮頸がんを防ぐ効果は、多くの研究で高いことが確認されています
2025年8月から男性も接種できるようになりました。パートナーを守ることにもつながります
当院では、公費の対象にならない方や男性の方にも自費で接種いただけます
HPVワクチンとシルガード9ってどんなもの?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、とてもありふれたウイルスです。性交渉の経験がある人であれば、男女を問わずほとんどの人が一度は感染するといわれています。多くは自然に体から消えていきますが、一部が長く居座ってしまうと、子宮頸がんや尖圭コンジローマ(性器のいぼ)などの原因になります。
いま日本で使われているHPVワクチンには、4種類のHPVを防ぐ「ガーダシル」と、9種類のHPVを防ぐ「シルガード9」があります。シルガード9は、ガーダシルが防げるタイプに加えて、さらに5種類のタイプにも対応しているため、より広い範囲で子宮頸がんの原因ウイルスを防ぐことができます。
どれくらい効果があるの?
シルガード9の効果は、世界各国で行われた大規模な臨床研究で確認されています。この研究では、シルガード9で新しく防げるようになった5種類のHPVについて、がんになる手前の変化(前がん病変)を防げるかどうかを、従来のガーダシルと比較して調べました。その結果、約97%の高い予防効果 があることがわかり、ガーダシルよりも優れた予防効果があると認められました。
そのほかにも、ウイルスが長く居座ってしまう「持続感染」を防ぐ効果や、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)を防ぐ効果も、いずれも90%を超える高い水準で確認されています。
これらの数値は「ワクチンを打たなかった場合」との比較ではなく、「従来のガーダシルを打った場合」との比較で出されたものです。ガーダシルもすでに高い効果が証明されているワクチンなので、シルガード9はそれをさらに上回る、より幅広い予防効果を持つワクチンといえます。
男性にも効果があります
「HPVワクチンは女性のためのもの」と思われている方も多いのですが、これは正しくありません。HPVは男性にも感染し、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)や、肛門がん、陰茎がん、のどのがんなどの原因になることがわかっています。海外の報告では、性交渉の経験がある男性のうち、生涯で一度はHPVに感染する人の割合は9割を超えるとされ、女性よりも高い数値が出ています。
こうした背景から、日本でも2025年8月にシルガード9が男性にも接種できるようになりました。国内で行われた臨床試験では、男性でもウイルスの持続感染を防ぐ効果が確認されており、接種を受けた人のほとんどで、体の中にしっかり抗体(ウイルスを防ぐ力)ができていることも確かめられています。この承認により、男性も性器のいぼや肛門がんなどを防ぐ目的で、シルガード9を接種できるようになりました。
男性自身の病気を防ぐだけでなく、パートナーへの感染を減らすという意味でも、男性の接種には大きな意味があります。
効果を数字で見てみましょう
ここまでご紹介した内容を、表とグラフにまとめました。
何を防ぐ効果か
予防効果
出典
追加された5種類のHPVによる、がんになる手前の変化
96.7%
001試験
ウイルスが12か月以上居座り続ける「持続感染」の予防
96.3%
001試験
性器のいぼ(尖圭コンジローマ)などの予防
93.8%
001試験
子宮頸がんそのものを含む、進んだ病変の予防(最長6年間の追跡)
97.1%
Huh WK, et al. Lancet 2017
男性:HPV18型の持続感染予防
96.0%
Harder T, et al. BMC Med 2018
男性:HPV16型の持続感染予防
78.7%
Harder T, et al. BMC Med 2018
0%
100%
がんの手前の変化を防ぐ
96.7%
長引く感染を防ぐ
96.3%
性器のいぼなどを防ぐ
93.8%
子宮頸がんを含む病変を防ぐ
97.1%
男性:HPV18型の感染を防ぐ
96.0%
男性:HPV16型の感染を防ぐ
78.7%
出典:MSD Connect シルガード9臨床成績ページ/Huh WK, et al. Lancet 2017/Harder T, et al. BMC Med 2018
ワクチンをたくさんの人が受けている国では何が起きている? ― 日本とオーストラリアの比較
HPVワクチンは、受ける人が多いほど、社会全体で効果が大きく現れます。2007年から世界に先がけてHPVワクチンを無料で受けられるようにしたオーストラリアと、2013年から2021年まで積極的なおすすめを控えていた日本とでは、ワクチンを受けている割合にも、子宮頸がんになる人の数にも、大きな差が生まれています。
HPVワクチンを受けている割合(15歳女子)
0%
100%
オーストラリア
78.6%
日本(2022年度)
30.1%
子宮頸がんになる人の数(人口10万人あたり)
0
18
オーストラリア
約7人
日本
約16人
出典:国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のHPV関連がんの予防ファクトシート2023」、厚生労働省HPVワクチン実施状況資料、Australian Cancer Council公表資料(2019年前後の報告値)
ワクチンを受けている割合がおよそ2.6倍違うオーストラリアと日本では、子宮頸がんになる人の数にもおよそ2倍以上の差が出ています。国立がん研究センターも、近年の日本の子宮頸がんの発生数・死亡数は、西欧やオーストラリア、韓国よりも多い水準になっていると指摘しています。オーストラリアでは、子宮頸がんで亡くなる方の割合も、1982年の10万人あたり7.7人から、ワクチンと検診の普及によって1.9人まで下がりました。一方、日本では2005年から2015年にかけて、子宮頸がんで亡くなる方の割合がむしろ9.6%増えたと報告されています。ワクチン接種と、定期的な子宮頸がん検診を両方続けることが、将来の安心につながります。
料金のご案内(自費接種・公費助成)
当院では、公費(定期接種)の対象とならない方や、より広い予防範囲を希望される方、そして男性の方に向けて、自費でのHPVワクチン接種を行っています。武蔵中原・元住吉・武蔵小杉周辺にお住まい・お勤めの方も、通いやすい立地でご相談いただけます。
ワクチン
料金
HPV(ガーダシル4価)
17,000円(×3回)
HPV(シルガード9価)
36,500円(×2回または3回)
HPV(シルガード9価):公費助成対象者
0円(×2回または3回)
公費で受けられる方について
川崎市の定期接種(公費)の対象は、12歳になる年度の初日から16歳になる年度末までの間にある女子(小学6年生~高校1年生相当)で、使用するワクチンはシルガード9(9価)です。現時点で男性は定期接種の対象になっていないため、自費での接種となります。対象の詳しい条件や接種の間隔、キャッチアップ接種などについては、川崎市の公式ページをご確認ください。
川崎市:ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(子宮頸がん等ワクチン)の予防接種について
季節休み期間中は絶好のチャンスです
HPVワクチンは2回、または3回に分けて接種する必要があるため、学校がある時期はスケジュールの調整が難しいという方も多いのではないでしょうか。夏休みや冬休みなどの季節休み期間中は、まとまった時間が取りやすく、接種後の体調管理もしやすいため、ワクチンを始めるにはよいタイミングです。特に3回接種が必要な方は、次の接種までの間隔(2か月後・6か月後など)を逆算しながら、計画的に進めることが大切です。学校生活が落ち着いているこの機会に、ぜひ接種の計画についてご相談ください。
武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアからも通いやすい当院で、ご不明な点やご希望のワクチンの種類など、お気軽にご相談ください。
🏥 監修者情報
監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)
日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 認定総合内科専門医(指導医)
日本高血圧学会 認定高血圧専門医
日本糖尿病学会 認定糖尿病専門医
日本循環器学会 認定循環器専門医
日本脈管学会 認定脈管専門医
日本医師会 認定産業医
日本糖尿病協会 糖尿病認定医
Fellow of the American College of Physicians(FACP)
Fellow of the American Heart Association(FAHA)
Fellow of the American College of Cardiology(FACC)
Fellow of the European Society of Cardiology(FESC)
Fellow of the Society of Cardiovascular Computed Tomography(FSCCT)
🏢 クリニック情報
なかはら内科クリニック
JR南武線「武蔵中原駅」から通院しやすい立地にあり、武蔵小杉・元住吉エリアからもアクセス良好です。
川崎市中原区を中心に、武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアなど、幅広い地域の患者様にご来院いただいております。
内科全般に加え、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や、動悸・胸痛など循環器疾患の診療にも対応しております。
📚 出典
川崎市「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(子宮頸がん等ワクチン)の予防接種について」ページ(2026年4月9日更新)
シルガード9の有効性データ:MSD Connect「シルガード9(女性)」「シルガード9(男性)」臨床成績ページ
Joura EA, Giuliano AR, Iversen OE, et al.; Broad Spectrum HPV Vaccine Study. A 9-valent HPV vaccine against infection and intraepithelial neoplasia in women. N Engl J Med. 2015;372(8):711-723. doi:10.1056/NEJMoa1405044
Huh WK, Joura EA, Giuliano AR, et al. Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years. Lancet. 2017;390(10108):2143-2159.
Harder T, Wichmann O, Klug SJ, et al. Efficacy, effectiveness and safety of vaccination against human papillomavirus in males: a systematic review. BMC Med. 2018;16(1):110.
国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの予防ファクトシート2023」
厚生労働省 第90回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料「HPVワクチンの実施状況について」(2023年1月20日)