HPVワクチン「シルガード9」を徹底解説 ― 子宮頸がん予防だけじゃない、男性にも
こんにちは。武蔵中原駅から徒歩12分、なかはら内科クリニック院長の岸です。当院には武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアにお住まいの方から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてのご相談を多くいただきます。今回は、当院でも自費で受けていただける「シルガード9」について、どれくらい効果があるのか、男性にも意味があるのか、そして料金や公費の対象についても、できるだけわかりやすくまとめてご紹介します。
この記事のポイント
シルガード9は、いま使えるワクチンの中で一番多くの種類のHPVを防げるワクチンです
子宮頸がんを防ぐ効果は、多くの研究で高いことが確認されています
2025年8月から男性も接種できるようになりました。パートナーを守ることにもつながります
当院では、公費の対象にならない方や男性の方にも自費で接種いただけます
HPVワクチンとシルガード9ってどんなもの?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、とてもありふれたウイルスです。性交渉の経験がある人であれば、男女を問わずほとんどの人が一度は感染するといわれています。多くは自然に体から消えていきますが、一部が長く居座ってしまうと、子宮頸がんや尖圭コンジローマ(性器のいぼ)などの原因になります。
いま日本で使われているHPVワクチンには、4種類のHPVを防ぐ「ガーダシル」と、9種類のHPVを防ぐ「シルガード9」があります。シルガード9は、ガーダシルが防げるタイプに加えて、さらに5種類のタイプにも対応しているため、より広い範囲で子宮頸がんの原因ウイルスを防ぐことができます。
どれくらい効果があるの?
シルガード9の効果は、世界各国で行われた大規模な臨床研究で確認されています。この研究では、シルガード9で新しく防げるようになった5種類のHPVについて、がんになる手前の変化(前がん病変)を防げるかどうかを、従来のガーダシルと比較して調べました。その結果、約97%の高い予防効果 があることがわかり、ガーダシルよりも優れた予防効果があると認められました。
そのほかにも、ウイルスが長く居座ってしまう「持続感染」を防ぐ効果や、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)を防ぐ効果も、いずれも90%を超える高い水準で確認されています。
これらの数値は「ワクチンを打たなかった場合」との比較ではなく、「従来のガーダシルを打った場合」との比較で出されたものです。ガーダシルもすでに高い効果が証明されているワクチンなので、シルガード9はそれをさらに上回る、より幅広い予防効果を持つワクチンといえます。
男性にも効果があります
「HPVワクチンは女性のためのもの」と思われている方も多いのですが、これは正しくありません。HPVは男性にも感染し、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)や、肛門がん、陰茎がん、のどのがんなどの原因になることがわかっています。海外の報告では、性交渉の経験がある男性のうち、生涯で一度はHPVに感染する人の割合は9割を超えるとされ、女性よりも高い数値が出ています。
こうした背景から、日本でも2025年8月にシルガード9が男性にも接種できるようになりました。国内で行われた臨床試験では、男性でもウイルスの持続感染を防ぐ効果が確認されており、接種を受けた人のほとんどで、体の中にしっかり抗体(ウイルスを防ぐ力)ができていることも確かめられています。この承認により、男性も性器のいぼや肛門がんなどを防ぐ目的で、シルガード9を接種できるようになりました。
男性自身の病気を防ぐだけでなく、パートナーへの感染を減らすという意味でも、男性の接種には大きな意味があります。
効果を数字で見てみましょう
ここまでご紹介した内容を、表とグラフにまとめました。
何を防ぐ効果か
予防効果
出典
追加された5種類のHPVによる、がんになる手前の変化
96.7%
001試験
ウイルスが12か月以上居座り続ける「持続感染」の予防
96.3%
001試験
性器のいぼ(尖圭コンジローマ)などの予防
93.8%
001試験
子宮頸がんそのものを含む、進んだ病変の予防(最長6年間の追跡)
97.1%
Huh WK, et al. Lancet 2017
男性:HPV18型の持続感染予防
96.0%
Harder T, et al. BMC Med 2018
男性:HPV16型の持続感染予防
78.7%
Harder T, et al. BMC Med 2018
0%
100%
がんの手前の変化を防ぐ
96.7%
長引く感染を防ぐ
96.3%
性器のいぼなどを防ぐ
93.8%
子宮頸がんを含む病変を防ぐ
97.1%
男性:HPV18型の感染を防ぐ
96.0%
男性:HPV16型の感染を防ぐ
78.7%
出典:MSD Connect シルガード9臨床成績ページ/Huh WK, et al. Lancet 2017/Harder T, et al. BMC Med 2018
ワクチンをたくさんの人が受けている国では何が起きている? ― 日本とオーストラリアの比較
HPVワクチンは、受ける人が多いほど、社会全体で効果が大きく現れます。2007年から世界に先がけてHPVワクチンを無料で受けられるようにしたオーストラリアと、2013年から2021年まで積極的なおすすめを控えていた日本とでは、ワクチンを受けている割合にも、子宮頸がんになる人の数にも、大きな差が生まれています。
HPVワクチンを受けている割合(15歳女子)
0%
100%
オーストラリア
78.6%
日本(2022年度)
30.1%
子宮頸がんになる人の数(人口10万人あたり)
0
18
オーストラリア
約7人
日本
約16人
出典:国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のHPV関連がんの予防ファクトシート2023」、厚生労働省HPVワクチン実施状況資料、Australian Cancer Council公表資料(2019年前後の報告値)
ワクチンを受けている割合がおよそ2.6倍違うオーストラリアと日本では、子宮頸がんになる人の数にもおよそ2倍以上の差が出ています。国立がん研究センターも、近年の日本の子宮頸がんの発生数・死亡数は、西欧やオーストラリア、韓国よりも多い水準になっていると指摘しています。オーストラリアでは、子宮頸がんで亡くなる方の割合も、1982年の10万人あたり7.7人から、ワクチンと検診の普及によって1.9人まで下がりました。一方、日本では2005年から2015年にかけて、子宮頸がんで亡くなる方の割合がむしろ9.6%増えたと報告されています。ワクチン接種と、定期的な子宮頸がん検診を両方続けることが、将来の安心につながります。
料金のご案内(自費接種・公費助成)
当院では、公費(定期接種)の対象とならない方や、より広い予防範囲を希望される方、そして男性の方に向けて、自費でのHPVワクチン接種を行っています。武蔵中原・元住吉・武蔵小杉周辺にお住まい・お勤めの方も、通いやすい立地でご相談いただけます。
ワクチン
料金
HPV(ガーダシル4価)
17,000円(×3回)
HPV(シルガード9価)
36,500円(×2回または3回)
HPV(シルガード9価):公費助成対象者
0円(×2回または3回)
公費で受けられる方について
川崎市の定期接種(公費)の対象は、12歳になる年度の初日から16歳になる年度末までの間にある女子(小学6年生~高校1年生相当)で、使用するワクチンはシルガード9(9価)です。現時点で男性は定期接種の対象になっていないため、自費での接種となります。対象の詳しい条件や接種の間隔、キャッチアップ接種などについては、川崎市の公式ページをご確認ください。
川崎市:ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(子宮頸がん等ワクチン)の予防接種について
季節休み期間中は絶好のチャンスです
HPVワクチンは2回、または3回に分けて接種する必要があるため、学校がある時期はスケジュールの調整が難しいという方も多いのではないでしょうか。夏休みや冬休みなどの季節休み期間中は、まとまった時間が取りやすく、接種後の体調管理もしやすいため、ワクチンを始めるにはよいタイミングです。特に3回接種が必要な方は、次の接種までの間隔(2か月後・6か月後など)を逆算しながら、計画的に進めることが大切です。学校生活が落ち着いているこの機会に、ぜひ接種の計画についてご相談ください。
武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアからも通いやすい当院で、ご不明な点やご希望のワクチンの種類など、お気軽にご相談ください。
🏥 監修者情報
監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)
日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 認定総合内科専門医(指導医)
日本高血圧学会 認定高血圧専門医
日本糖尿病学会 認定糖尿病専門医
日本循環器学会 認定循環器専門医
日本脈管学会 認定脈管専門医
日本医師会 認定産業医
日本糖尿病協会 糖尿病認定医
Fellow of the American College of Physicians(FACP)
Fellow of the American Heart Association(FAHA)
Fellow of the American College of Cardiology(FACC)
Fellow of the European Society of Cardiology(FESC)
Fellow of the Society of Cardiovascular Computed Tomography(FSCCT)
🏢 クリニック情報
なかはら内科クリニック
JR南武線「武蔵中原駅」から通院しやすい立地にあり、武蔵小杉・元住吉エリアからもアクセス良好です。
川崎市中原区を中心に、武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアなど、幅広い地域の患者様にご来院いただいております。
内科全般に加え、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や、動悸・胸痛など循環器疾患の診療にも対応しております。
📚 出典
川崎市「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(子宮頸がん等ワクチン)の予防接種について」ページ(2026年4月9日更新)
シルガード9の有効性データ:MSD Connect「シルガード9(女性)」「シルガード9(男性)」臨床成績ページ
Joura EA, Giuliano AR, Iversen OE, et al.; Broad Spectrum HPV Vaccine Study. A 9-valent HPV vaccine against infection and intraepithelial neoplasia in women. N Engl J Med. 2015;372(8):711-723. doi:10.1056/NEJMoa1405044
Huh WK, Joura EA, Giuliano AR, et al. Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years. Lancet. 2017;390(10108):2143-2159.
Harder T, Wichmann O, Klug SJ, et al. Efficacy, effectiveness and safety of vaccination against human papillomavirus in males: a systematic review. BMC Med. 2018;16(1):110.
国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの予防ファクトシート2023」
厚生労働省 第90回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料「HPVワクチンの実施状況について」(2023年1月20日)