健診の尿検査、見逃していませんか?

2026/09/13

健診の尿検査、見逃していませんか?

健診の尿検査、見逃していませんか?慢性腎臓病について
―蛋白尿が教えてくれる、あなたの未来―

先日、院長の岸が「IMAGINE Project 講演会 ~地域で取り組むCKD~」という、川崎市の内科医が多数参加する講演会にお招きいただき、
蛋白尿が教えてくれる未来 ―CKDと心血管イベントを防ぐために―」というテーマでお話しさせていただきました。

この講演会は川崎市中原区医師会が主催し、川崎市医師会・日本腎臓病協会などが共催する、地域のかかりつけ医向けの勉強会です。
「健診の尿検査をどう日常診療に活かすか」「かかりつけ医と腎臓の専門医がどう連携するか」といったテーマで、地域の先生方と一緒に考える時間になりました。

今日はこの講演会でお話しした内容を、患者さんにも知っていただきたいので、できるだけわかりやすくご紹介したいと思います。
「健診で尿蛋白を指摘されたけれど、症状もないし大丈夫だろう」と思っている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

そもそも「蛋白尿」ってなに?

私たちの腎臓は、血液をろ過して余分な老廃物を尿として排出し、体に必要なタンパク質は体の中に残す、精密なフィルターのような働きをしています。
ところが腎臓のフィルター機能に負担がかかると、本来は体に残るはずのタンパク質(アルブミンなど)が、少しずつ尿に漏れ出てくるようになります。これが「蛋白尿」です。

蛋白尿は、量が少ないうちはまったく自覚症状がありません。「症状がないから大丈夫」と思われがちですが、実はここが一番大切なポイントです。
蛋白尿は、将来の腎臓と心臓の健康状態を、症状が出るずっと前から教えてくれるサインなのです。

健診結果の「-」「±」「1+」、それぞれどんな意味?

健診の尿検査の結果は、次のように区分されています。

- / ±
正常範囲、または軽度
まずは経過観察でよい段階

1+
軽度〜中等度の蛋白尿
一度、詳しい検査をおすすめする段階

2+以上
高度な蛋白尿
できるだけ早く相談してほしい段階

ポイントは、「±」が1回だけ出た場合はあまり心配いりませんが、2年連続で「±」が続く場合や、「1+」以上が出た場合は、一度きちんと調べることをおすすめします
このとき、試験紙の検査だけでなく、尿を採って「尿蛋白/クレアチニン比」という、より正確な数値を測る検査(採血のような特別な準備は不要で、通常の尿検査と同じように提出いただけます)を追加することで、体の状態をより正確に把握できます。

実は、腎臓と心臓は「つながって」います

「蛋白尿は腎臓だけの問題」と思われがちですが、実際には腎臓と心臓は密接に影響し合っています。これを「心腎連関」と呼びます。

腎臓の機能が少しずつ落ちてくると、体に余分な水分や塩分がたまりやすくなったり、血圧のコントロールに関わるホルモンのバランスが崩れたりします。
これらが積み重なることで、心臓に負担がかかり、動脈硬化や心不全のリスクが上がっていくことが、大規模な研究で分かっています。

つまり蛋白尿は、腎臓からの注意信号であると同時に、心臓や血管からの「そろそろ気をつけて」というサインでもあるのです。

早めに気づけば、対策できます

ここでお伝えしたいのは、悲観的な話ではなく、むしろ希望のある話です。
実際に、腎臓を保護するお薬(血圧のお薬の一種や、もともと糖尿病治療薬として開発されたお薬など)を使うことで、腎臓の機能低下や心臓の病気を防げることが、世界的な大規模研究で示されています。

大切なのは、「症状がないから」と先延ばしにせず、蛋白尿が見つかった時点で早めに対策を始めることです。生活習慣の見直し(塩分を控える、体重管理、禁煙など)と合わせて、必要に応じてお薬による治療を組み合わせることで、将来のリスクを大きく減らすことができます。

まとめ

  • 蛋白尿は、症状が出るずっと前から腎臓と心臓の将来のリスクを教えてくれるサイン
  • 健診で「1+」以上、または「±」が2年連続で出た場合は、一度詳しい検査を受けましょう
  • 腎臓と心臓はつながっており、早めの対策が両方を守ることにつながります
  • 気になる結果が出た方、健診結果をお持ちいただければ、当院で詳しい検査(尿蛋白の定量検査など)についてご相談いただけます

「これくらい大丈夫だろう」と自己判断せず、気になる結果があれば、ぜひ一度ご相談ください。

🏥 監修者情報

監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)

日本専門医資格

  • 認定内科医
  • 総合内科専門医(指導医)
  • 高血圧専門医
  • 糖尿病専門医
  • 循環器専門医
  • 脈管専門医
  • 認定産業医
  • 糖尿病認定医

国際フェロー

  • FACP(米国内科学会)
  • FAHA(米国心臓協会)
  • FACC(米国心臓病学会)
  • FESC(欧州心臓病学会)
  • FSCCT(心臓CT学会)

🏢 クリニック情報

なかはら内科クリニック

〒211-0041 神奈川県川崎市中原区下小田中3丁目30番地3号

JR南武線・武蔵中原駅より徒歩12分
武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアからの通院も可能です

一般内科・循環器内科・生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)を中心に、地域のかかりつけ医として診療しております。健診結果で気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。

📚 出典
  • 日本腎臓学会編. CKD診療ガイド2024. 東京医学社, 2024.
  • 日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
  • Matsushita K, et al. Lancet. 2010;375:2073-81.
  • Matsushita K, et al. Nat Rev Nephrol. 2022;18:696.
  • Herrington WG, et al. N Engl J Med. 2023;388:117.(EMPA-KIDNEY試験)
  • 2026 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease and chronic kidney disease. Eur Heart J.
  • IMAGINE Project 講演会 ~地域で取り組むCKD~(2026年9月11日, 主催:川崎市中原区医師会)講演資料


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