HPVワクチン「シルガード9」
2026/08/02
HPVワクチン「シルガード9」

HPVワクチン「シルガード9」を徹底解説 ― 子宮頸がん予防だけじゃない、男性にも
こんにちは。武蔵中原駅から徒歩12分、なかはら内科クリニック院長の岸です。当院には武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアにお住まいの方から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてのご相談を多くいただきます。今回は、当院でも自費で受けていただける「シルガード9」について、どれくらい効果があるのか、男性にも意味があるのか、そして料金や公費の対象についても、できるだけわかりやすくまとめてご紹介します。
この記事のポイント
- シルガード9は、いま使えるワクチンの中で一番多くの種類のHPVを防げるワクチンです
- 子宮頸がんを防ぐ効果は、多くの研究で高いことが確認されています
- 2025年8月から男性も接種できるようになりました。パートナーを守ることにもつながります
- 当院では、公費の対象にならない方や男性の方にも自費で接種いただけます
HPVワクチンとシルガード9ってどんなもの?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、とてもありふれたウイルスです。性交渉の経験がある人であれば、男女を問わずほとんどの人が一度は感染するといわれています。多くは自然に体から消えていきますが、一部が長く居座ってしまうと、子宮頸がんや尖圭コンジローマ(性器のいぼ)などの原因になります。
いま日本で使われているHPVワクチンには、4種類のHPVを防ぐ「ガーダシル」と、9種類のHPVを防ぐ「シルガード9」があります。シルガード9は、ガーダシルが防げるタイプに加えて、さらに5種類のタイプにも対応しているため、より広い範囲で子宮頸がんの原因ウイルスを防ぐことができます。
どれくらい効果があるの?
シルガード9の効果は、世界各国で行われた大規模な臨床研究で確認されています。この研究では、シルガード9で新しく防げるようになった5種類のHPVについて、がんになる手前の変化(前がん病変)を防げるかどうかを、従来のガーダシルと比較して調べました。その結果、約97%の高い予防効果があることがわかり、ガーダシルよりも優れた予防効果があると認められました。
そのほかにも、ウイルスが長く居座ってしまう「持続感染」を防ぐ効果や、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)を防ぐ効果も、いずれも90%を超える高い水準で確認されています。
これらの数値は「ワクチンを打たなかった場合」との比較ではなく、「従来のガーダシルを打った場合」との比較で出されたものです。ガーダシルもすでに高い効果が証明されているワクチンなので、シルガード9はそれをさらに上回る、より幅広い予防効果を持つワクチンといえます。
男性にも効果があります
「HPVワクチンは女性のためのもの」と思われている方も多いのですが、これは正しくありません。HPVは男性にも感染し、性器のいぼ(尖圭コンジローマ)や、肛門がん、陰茎がん、のどのがんなどの原因になることがわかっています。海外の報告では、性交渉の経験がある男性のうち、生涯で一度はHPVに感染する人の割合は9割を超えるとされ、女性よりも高い数値が出ています。
こうした背景から、日本でも2025年8月にシルガード9が男性にも接種できるようになりました。国内で行われた臨床試験では、男性でもウイルスの持続感染を防ぐ効果が確認されており、接種を受けた人のほとんどで、体の中にしっかり抗体(ウイルスを防ぐ力)ができていることも確かめられています。この承認により、男性も性器のいぼや肛門がんなどを防ぐ目的で、シルガード9を接種できるようになりました。
男性自身の病気を防ぐだけでなく、パートナーへの感染を減らすという意味でも、男性の接種には大きな意味があります。
効果を数字で見てみましょう
ここまでご紹介した内容を、表とグラフにまとめました。
| 何を防ぐ効果か | 予防効果 | 出典 |
|---|---|---|
| 追加された5種類のHPVによる、がんになる手前の変化 | 96.7% | 001試験 |
| ウイルスが12か月以上居座り続ける「持続感染」の予防 | 96.3% | 001試験 |
| 性器のいぼ(尖圭コンジローマ)などの予防 | 93.8% | 001試験 |
| 子宮頸がんそのものを含む、進んだ病変の予防(最長6年間の追跡) | 97.1% | Huh WK, et al. Lancet 2017 |
| 男性:HPV18型の持続感染予防 | 96.0% | Harder T, et al. BMC Med 2018 |
| 男性:HPV16型の持続感染予防 | 78.7% | Harder T, et al. BMC Med 2018 |
ワクチンをたくさんの人が受けている国では何が起きている? ― 日本とオーストラリアの比較
HPVワクチンは、受ける人が多いほど、社会全体で効果が大きく現れます。2007年から世界に先がけてHPVワクチンを無料で受けられるようにしたオーストラリアと、2013年から2021年まで積極的なおすすめを控えていた日本とでは、ワクチンを受けている割合にも、子宮頸がんになる人の数にも、大きな差が生まれています。
出典:国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のHPV関連がんの予防ファクトシート2023」、厚生労働省HPVワクチン実施状況資料、Australian Cancer Council公表資料(2019年前後の報告値)
ワクチンを受けている割合がおよそ2.6倍違うオーストラリアと日本では、子宮頸がんになる人の数にもおよそ2倍以上の差が出ています。国立がん研究センターも、近年の日本の子宮頸がんの発生数・死亡数は、西欧やオーストラリア、韓国よりも多い水準になっていると指摘しています。オーストラリアでは、子宮頸がんで亡くなる方の割合も、1982年の10万人あたり7.7人から、ワクチンと検診の普及によって1.9人まで下がりました。一方、日本では2005年から2015年にかけて、子宮頸がんで亡くなる方の割合がむしろ9.6%増えたと報告されています。ワクチン接種と、定期的な子宮頸がん検診を両方続けることが、将来の安心につながります。
料金のご案内(自費接種・公費助成)
当院では、公費(定期接種)の対象とならない方や、より広い予防範囲を希望される方、そして男性の方に向けて、自費でのHPVワクチン接種を行っています。武蔵中原・元住吉・武蔵小杉周辺にお住まい・お勤めの方も、通いやすい立地でご相談いただけます。
| ワクチン | 料金 |
|---|---|
| HPV(ガーダシル4価) | 17,000円(×3回) |
| HPV(シルガード9価) | 36,500円(×2回または3回) |
| HPV(シルガード9価):公費助成対象者 | 0円(×2回または3回) |
公費で受けられる方について
川崎市の定期接種(公費)の対象は、12歳になる年度の初日から16歳になる年度末までの間にある女子(小学6年生~高校1年生相当)で、使用するワクチンはシルガード9(9価)です。現時点で男性は定期接種の対象になっていないため、自費での接種となります。対象の詳しい条件や接種の間隔、キャッチアップ接種などについては、川崎市の公式ページをご確認ください。
季節休み期間中は絶好のチャンスです
HPVワクチンは2回、または3回に分けて接種する必要があるため、学校がある時期はスケジュールの調整が難しいという方も多いのではないでしょうか。夏休みや冬休みなどの季節休み期間中は、まとまった時間が取りやすく、接種後の体調管理もしやすいため、ワクチンを始めるにはよいタイミングです。特に3回接種が必要な方は、次の接種までの間隔(2か月後・6か月後など)を逆算しながら、計画的に進めることが大切です。学校生活が落ち着いているこの機会に、ぜひ接種の計画についてご相談ください。
武蔵中原・元住吉・武蔵小杉エリアからも通いやすい当院で、ご不明な点やご希望のワクチンの種類など、お気軽にご相談ください。
🏥 監修者情報
監修:岸 智(なかはら内科クリニック 院長)
- 日本内科学会 認定内科医
- 日本内科学会 認定総合内科専門医(指導医)
- 日本高血圧学会 認定高血圧専門医
- 日本糖尿病学会 認定糖尿病専門医
- 日本循環器学会 認定循環器専門医
- 日本脈管学会 認定脈管専門医
- 日本医師会 認定産業医
- 日本糖尿病協会 糖尿病認定医
- Fellow of the American College of Physicians(FACP)
- Fellow of the American Heart Association(FAHA)
- Fellow of the American College of Cardiology(FACC)
- Fellow of the European Society of Cardiology(FESC)
- Fellow of the Society of Cardiovascular Computed Tomography(FSCCT)
🏢 クリニック情報
なかはら内科クリニック
JR南武線「武蔵中原駅」から通院しやすい立地にあり、武蔵小杉・元住吉エリアからもアクセス良好です。
川崎市中原区を中心に、武蔵小杉・元住吉・日吉・武蔵新城エリアなど、幅広い地域の患者様にご来院いただいております。
内科全般に加え、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や、動悸・胸痛など循環器疾患の診療にも対応しております。
📚 出典
川崎市「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(子宮頸がん等ワクチン)の予防接種について」ページ(2026年4月9日更新)
シルガード9の有効性データ:MSD Connect「シルガード9(女性)」「シルガード9(男性)」臨床成績ページ
Joura EA, Giuliano AR, Iversen OE, et al.; Broad Spectrum HPV Vaccine Study. A 9-valent HPV vaccine against infection and intraepithelial neoplasia in women. N Engl J Med. 2015;372(8):711-723. doi:10.1056/NEJMoa1405044
Huh WK, Joura EA, Giuliano AR, et al. Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years. Lancet. 2017;390(10108):2143-2159.
Harder T, Wichmann O, Klug SJ, et al. Efficacy, effectiveness and safety of vaccination against human papillomavirus in males: a systematic review. BMC Med. 2018;16(1):110.
国立がん研究センター「子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの予防ファクトシート2023」
厚生労働省 第90回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料「HPVワクチンの実施状況について」(2023年1月20日)
©医療法人社団ミネルバ なかはら内科クリニック