血圧について知っておきたいこと

2026/03/20

血圧について知っておきたいこと

PATIENT INFORMATION

血圧について知っておきたいこと

日本高血圧協会のガイドラインに基づいた、患者さま向けQ&A

🩺

血圧の基準値と分類

Q
血圧が「いくつ以上」だと高血圧なのですか?
A
診察室では 140/90mmHg 以上、ご家庭では 135/85mmHg 以上が高血圧の基準です。正常血圧は 120/80mmHg 未満です。

血圧値は以下のように分類されます(日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025より)。

分類 診察室血圧(mmHg) 家庭血圧(mmHg)
収縮期 拡張期 収縮期 拡張期
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 120〜129 かつ <80 115〜124 かつ <75
高値血圧 130〜139 かつ/または 80〜89 125〜134 かつ/または 75〜84
Ⅰ度高血圧 140〜159 かつ/または 90〜99 135〜144 かつ/または 85〜89
Ⅱ度高血圧 160〜179 かつ/または 100〜109 145〜159 かつ/または 90〜99
Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110 ≧160 かつ/または ≧100

※診察室血圧と家庭血圧が異なる場合、正確に測定された家庭血圧の分類が優先されます。

⚠ 130mmHgを超えたら要注意130/80mmHg を超えると心臓病・脳卒中のリスクが高まります。「高値血圧」の段階から生活習慣の見直しを始めましょう。

Q
「白衣高血圧」「仮面高血圧」とは何ですか?
A
病院でのみ高くなるのが「白衣高血圧」、自宅や職場でのみ高くなるのが「仮面高血圧」です。

白衣高血圧:医療機関でのみ基準値を超え、自宅では正常な状態です。すぐに薬を使う治療は行いませんが、将来的に本当の高血圧に移行する確率が高いため、半年〜1年ごとの定期受診と家庭血圧の測定が必要です。

仮面高血圧:診察室では正常でも、自宅や職場では高血圧の状態です。脳卒中・心筋梗塞の発症リスクが約3倍高いことが報告されており、通常の高血圧と同様の治療が必要です。

いずれも家庭血圧の定期測定が発見と管理の鍵になります。

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収縮期血圧・拡張期血圧・脈圧の意味と対策

Q
「上の血圧(収縮期)」と「下の血圧(拡張期)」はそれぞれ何を表していますか?
A
収縮期は心臓が血液を送り出す瞬間の圧力、拡張期は心臓が休んでいるときの圧力です。どちらも血管を傷める原因となります。

収縮期血圧(上の血圧):心臓が収縮して全身へ血液を送り出す際の動脈壁にかかる圧力です。心臓の「ポンプする力」を反映しています。

拡張期血圧(下の血圧):心臓が拡張し次の収縮に備えているとき、動脈が元の形に戻ろうとする弾性によって維持される圧力です。血管の「しなやかさ」を反映しています。

どちらも正常範囲に保つことが大切です。

Q
「脈圧」とは何ですか?なぜ重要なのですか?
A
脈圧は「収縮期血圧 ー 拡張期血圧」で、動脈の硬さの目安となる重要な指標です。

脈圧の求め方:収縮期血圧(上)から拡張期血圧(下)を引いた値です。例えば 140/80mmHg なら、脈圧は 60mmHg になります。

脈圧が意味すること:加齢や動脈硬化が進むと血管が硬くなり、収縮期血圧だけが大きく上昇し、拡張期血圧はむしろ低下します。結果として脈圧が広がります。脈圧 60mmHg 以上は動脈硬化の疑いサインとされています。

📌 高齢者に多い「孤立性収縮期高血圧」上の血圧だけが高く(≧140mmHg)、下の血圧は低い(<90mmHg)状態を指します。動脈硬化が進んだ結果として生じ、脈圧が大きく広がります。特に注意が必要な高血圧の形態です。

Q
収縮期血圧(上の血圧)が高いと、どんな問題がありますか?どうすれば下がりますか?
A
心臓が送り出す力が強すぎる状態で、脳・心臓・腎臓への負担が増します。減塩・運動・肥満改善が最も効果的です。

心臓が血液を送り出すたびに動脈壁へ繰り返し強い衝撃が加わります。この機械的ストレスが動脈硬化を促進します。

🔴 主なリスク

脳卒中(脳出血・脳梗塞):脳の細い血管が衝撃に耐えられず破裂・閉塞します。
心肥大・心不全:高い圧力に抵抗し続けた心臓の筋肉が肥大し、ポンプ機能が低下します。
腎臓障害:糸球体血管がダメージを受け、慢性腎臓病が進行します。
大動脈瘤・大動脈解離:大動脈壁が傷み、こぶ状に膨らんだり内膜が裂けたりします。

🟢 収縮期血圧を下げるために

減塩(1日6g未満):ナトリウムの過剰摂取は血液量を増やし、心臓が送り出す力を増大させます。
有酸素運動:ウォーキング・水泳などの継続的な運動は、心臓のポンプ効率を改善します。
肥満の改善:体重5%の減少でも明確な降圧効果があります。
節酒・禁煙:アルコールは交感神経を刺激し、喫煙は血管を収縮させ動脈硬化を加速します。
📌 収縮期血圧は「心臓と血液量」の問題塩分・肥満・運動不足が主な生活習慣上の原因です。生活習慣の改善で目標に達しない場合は降圧薬(カルシウム拮抗薬・ARB など)を組み合わせます。

Q
拡張期血圧(下の血圧)が高いと、どんな問題がありますか?どうすれば下がりますか?
A
心臓が休む間も血管への圧力が高い状態です。末梢血管の収縮が主因で、ストレス・禁煙・減塩が特に有効です。

拡張期血圧が高い場合、24時間途切れることなく血管壁に圧力が加わり続けます。末梢血管抵抗の増大(血管が常に収縮している状態)が主な原因で、若・中年層に多いパターンです。

🔴 主なリスク

冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞):冠動脈は主に拡張期に心臓へ血液を供給します。拡張期血圧が高いと冠動脈への負担が増し、動脈硬化が進みやすくなります。
脳の細動脈障害:持続的な高圧が微小な脳梗塞(ラクナ梗塞)や認知症リスクを高めます。
腎臓の糸球体障害:拡張期血圧が高い状態が続くと蛋白尿・腎機能低下が進みます。

🟢 拡張期血圧を下げるために

ストレス管理・自律神経の安定:精神的ストレスは末梢血管を収縮させます。十分な睡眠・リラクゼーションが重要です。
禁煙:ニコチンは末梢血管を強力に収縮させます。喫煙後は拡張期血圧が顕著に上昇します。
減塩とカリウムの摂取:野菜・果物・大豆食品に含まれるカリウムは血管を拡張させる働きがあります。
有酸素運動:末梢血管を拡張させ、安静時の血管抵抗を低下させる効果があります。
📌 拡張期血圧は「血管の収縮度」の問題ストレス・喫煙・塩分・肥満が末梢血管抵抗を高める代表的な要因です。若・中年層に多く見られます。
📌 高齢になると拡張期血圧はむしろ下がりやすい動脈硬化が進むと血管の弾力が失われ、収縮期血圧は上昇する一方で拡張期血圧は低下する傾向があります。この場合は「脈圧の拡大」として評価します。

⚠️

高血圧の原因・リスク要因

Q
なぜ「サイレントキラー」と呼ばれるのですか?
A
自覚症状がないまま脳・心臓・腎臓を傷め続け、ある日突然、重篤な病気を引き起こすからです。

高血圧は長期間放置すると、脳卒中・心筋梗塞・腎不全などを引き起こしますが、かなりの期間は本人が気づかないまま進行します。「静かなる殺人者(サイレントキラー)」と呼ばれる所以です。

定期的な血圧測定と、早期からの管理が生命を守る最善策です。

Q
高血圧の種類と主な原因を教えてください
A
約90%は生活習慣と体質が絡み合う「本態性高血圧」、残り10%は特定の病気が原因の「二次性高血圧」です。

本態性高血圧(約90%):塩分の過剰摂取・肥満・ストレス・運動不足といった環境因子と、遺伝的体質が複合的に作用して発症します。

二次性高血圧(約10%):腎臓の病気、ホルモン異常(原発性アルドステロン症など)、睡眠時無呼吸症候群などが原因となります。若年性・難治性の高血圧では必ず検査が必要です。

Q
高血圧を放置するとどんな合併症が起きますか?
A
脳・心臓・腎臓・血管・眼など、全身の臓器に障害をきたします。
脳:脳出血・脳梗塞(脳卒中)、認知症リスクの上昇
心臓:狭心症・心筋梗塞・心不全・心房細動などの不整脈
腎臓:慢性腎臓病(腎硬化症)、進行すると透析が必要になる場合も
血管:大動脈瘤・大動脈解離、下肢動脈の閉塞による歩行障害
眼:網膜動脈の障害による眼底出血、視力低下

適切な血圧管理を続けることで、これらの合併症の発症を大幅に予防・遅延できます。

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生活習慣の改善

Q
減塩は本当に血圧に効きますか?どれくらい減らせばよいですか?
A
減塩は血圧を下げるだけでなく、脳卒中・心臓病・腎臓病の予防にも有効です。1日6g未満が目標です。

日本高血圧学会は1日の食塩摂取量6g未満を推奨しており、WHOは5g未満を目標としています。加工食品・カップ麺・外食には想像以上の塩分が含まれています。購入前に「食塩相当量」の表示を確認する習慣が第一歩です。

💡 代替塩(減塩しお)の活用も一つの方法ナトリウムの一部をカリウムに置き換えた「減塩しお」を使った研究では、約5年間で脳卒中の発症が14%、総死亡が12%減少したことが報告されています。ただし腎臓病のある方はかかりつけ医にご相談ください。

Q
運動や体重管理は血圧に影響しますか?
A
はい。継続的な有酸素運動と肥満改善は、降圧薬に匹敵する効果をもたらすことがあります。
毎日30分程度のウォーキングを目標にする
肥満がある場合は体重5%の減量でも血圧低下が期待できる
節酒(男性: 1日20ml以下のエタノール、女性: 10ml以下)
禁煙(喫煙は血管を傷め、リスクを大幅に高める)
十分な睡眠とストレス管理

Q
家庭で血圧を測る際の正しい方法は?
A
朝(起床1時間以内・排尿後・朝食・服薬前)と夜(就寝前)に各1〜2回測定し、全ての値を記録します。
静かで快適な室温の部屋で、背もたれ付きの椅子に足を組まず座る
1〜2分間安静にしてからリラックスして測定する
腕帯(カフ)は心臓と同じ高さになるようにする
測定中は会話しない。測定前の喫煙・飲酒・カフェイン摂取は避ける
一番低い値だけでなく、測定した全ての値を記録する

診断には5日間以上の平均値が用いられます。ご受診の際に記録をご持参ください。

💊

治療・薬について

Q
一度降圧薬を飲み始めたら、一生やめられませんか?
A
必ずしも生涯服用が必要なわけではありません。生活習慣の改善により、医師の判断のもとで減量・中止できる場合があります。

減量・減塩・運動療法が功を奏し血圧が正常化した場合は、医師の判断で薬を減らしたり中止できることがあります。

自己判断での服薬中断は脳卒中のリスクを高めるため、必ず主治医にご相談ください。

💡 早期治療のメリット早い段階から治療を始めるほど、血管や臓器へのダメージが少なく、より少ない薬で管理できる可能性が高まります。

Q
高血圧の治療目標値(目標血圧)はどのくらいですか?
A
多くの成人で診察室血圧 130/80mmHg 未満、家庭血圧 125/75mmHg 未満が目標です。

最新のガイドライン(高血圧管理・治療ガイドライン2025)では、自立して外来通院できる高齢者でも130mmHg未満を目指すことが推奨されています。「年齢+90が正常」という考え方は医学的根拠がない誤った情報です。

合併症(糖尿病・慢性腎臓病など)がある場合は、より厳格な目標が設定されることもあります。詳しくは担当医にご確認ください。

Q
高血圧と認知症は関係がありますか?
A
中年期の高血圧は認知症のリスク因子です。早期からの血圧管理が認知症予防にもつながります。

高血圧のある方は認知症を発症しやすく(約1.2倍)、中年期からしっかり血圧を管理することが、将来の認知症発症を抑える効果があると複数の研究で示されています。

脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症の発症とも関連しており、中年期の高血圧治療はアルツハイマー病の発症を抑制する可能性があるとされています。

本ページの内容は日本高血圧協会「高血圧Q&A」および「高血圧管理・治療ガイドライン2025(日本高血圧学会)」に基づいています。

個別の症状・治療については必ず担当医にご相談ください。


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