糖尿病と感染症
2020/06/06
糖尿病と感染症
・糖尿病と感染症 (COVID-19を含めて)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で4月7日に緊急事態宣言が発令されてから約2ヶ月が経とうとしている。「Stay Home」「不要不急の外出自粛」の生活により新規感染者は全国的に減少傾向にある。一方で、活動性の低下や間食増加・運動量に対して相対的な食事摂取量増加により体重増加を呈する患者が増えているという。生活習慣病の患者さんを中心に診察している私の外来では1―2ヶ月ぶりにお会いする患者さんの殆どが血糖コントロール悪化・中性脂肪増加・肝機能障害を認めていた。そして、患者さんが口にすることは、持病を持っていると「コロナに罹りやすい」「悪化しやすい」という根拠に、感染確率を下げるために外出を控え、よく食べよく寝ることを実践していたようであった。
しかし、感染症はCOVID-19だけではない。糖尿病に関しては血糖コントロール不良になればなるほど感染リスクは上昇することは周知の事実である。実際にどのくらいのリスクかというと、感染症のなりやすさをオッズ比であらわすことができるが、“非糖尿病群“に対して“糖尿病群“では全ての感染症に対してオッズ比が1.5 (95% C.I. 1.46-1.54)となる。では、血糖コントロールではどうか。全ての感染症に対してHbA1c<7%の群と比べると、7%−8.5%の群ではOR 1.11 (95% C.I. 1.05-1.18), >8.5%の群ではOR1.35% (95%C.I. 1.25-1.45)と血糖コントロール悪化に伴いそのリスクは増加する。
糖尿病とCOVID-19との関連について「糖尿病だとかかりやすいとか悪化しやすいとTVワイドショーでやっていたので家に引きこもっていました。先生、本当のところどうなの?」と患者さんによく質問を受ける。現在までの総説によると、罹患リスクは変わらないが、重症化しやすい傾向があるという。先日、中国武漢から糖尿病患者は、COVID-19の病状が急速に進行し予後不良となりやすいという研究結果が発表された。糖尿病群と非糖尿病群で比較すると、年齢や性別に有意差はなかったが、発熱の頻度は糖尿病群の方が有意に低かった(59.5 v.s. 83.2%、P=0.002)。糖尿病群の死亡率は10.8%で非糖尿病群の3.6%より高い傾向を認めた(P=0.185)。糖尿病群で主に炎症マーカー(CRP, IL-6, D-ダイマー)で高値(有意差あり)が認められ、胸部CT画像所見でも著明な変化が認められた。
今後も免疫獲得や治療法の確立がない限り、第2波などで「Stay Home」「不要不急の外出自粛」の生活を強いられる可能性があるが、生活習慣病を考慮するとバランスの取れた食事・運動生活を行うことが大切であることは言うまでもない。
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