高血圧ガイドライン2025(JSH2025)患者さん向けご案内

2025/09/04

高血圧ガイドライン2025(JSH2025)患者さん向けご案内

高血圧ガイドラインが改定されました!

2025年8月に日本高血圧学会(JSH)が最新の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を公表しました。2019年版からの変更点を含め、患者さんに大切なポイントだけを分かりやすくまとめました。


  • 目標は「血圧 130/80mmHg未満」。若い方・高齢の方・合併症の有無に関わらず、基本の目標は同じになりました。
  • 家庭での血圧測定(家庭血圧)が診療の中心。朝・晩の記録が治療方針を決めます。
  • 生活習慣の“実行”を重視。減塩に加えて、**尿のナトリウム/カリウム比(Na/K比)**やアプリの活用など、行動を続けるための工夫が推奨されました。

ただし、妊娠中・施設入所中・終末期などは個別に目標を調整します。ご心配な場合は必ずご相談ください。


  • 名称が「治療」→「管理・治療」に:病院の治療だけでなく、家庭での“自己管理”を重視します。
  • 血圧の分類(高血圧の基準)は据え置き:診断は従来どおり診察室血圧 140/90mmHg以上(家庭血圧 135/85mmHg以上)。
  • 目標血圧が“統一”:段階的な「140/90をまず目指す」という中間目標がなくなり、原則 130/80未満を目指します。
  • 高齢者も同じ目標を基本に:2019年版の「75歳以上は140/90未満」から変更。体調に配慮しつつ130/80未満へ。
  • “朝の高血圧”対策を社会ぐるみで強化:朝の血圧を130未満にする運動(Asakatsu BP)など、啓発を強化。
  • 生活習慣の新しい評価法尿Na/K比の活用を提案。減塩だけでなくカリウムを増やす食事を見える化します。
  • 運動は有酸素+筋力トレーニング:筋トレも血圧を下げる方法として明記されました。
  • 薬の使い方の整理:第一選択薬(CCB/ARB/ACE/利尿薬/β遮断薬)は継続。早めの併用や、糖尿病(蛋白尿なし)でのRAS阻害薬の“優先”を外すなどの調整が入りました。
  • 女性・がん治療後などライフステージ別の章を拡充:妊娠前の治療選択やオンコ・ハイパーテンション(がん医療と高血圧)にも対応。

  • 診察室(病院・クリニック)130/80mmHg未満
  • 家庭血圧(朝・晩の平均)125/75mmHg未満が目安(日本の研究に基づく推奨)
  • 朝の血圧(起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前):できれば 130/80未満を目指しましょう。

ふらつき・立ちくらみがある時は無理をせず、目標を調整します。


  1. :起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前、座位1–2分後に2回
  2. :就寝前に座位1–2分後に2回
  3. 記録:アプリまたは紙で日々の平均をつける(1回ずつの上下より平均値が大切)。
  4. 機器:上腕式の家庭血圧計を推奨(定期的に買い替え・点検)。

  1. 減塩 1日6g未満(めん類の汁は残す、加工食品を控える)。
  2. カリウムを増やす:野菜・果物・海藻・豆・乳製品をプラス。:腎不全の方はカリウムを減らす
    • 目安として尿Na/K比 ≈ 2未満を意識(簡易測定器やアプリの活用)。
  3. 体重管理:目安は BMI 25未満。1kg減で血圧も下がりやすくなります。
  4. 運動
    • 有酸素運動(速歩など)30分×週5日を目標。
    • 筋力トレーニング(自重でOK)週2–3回
  5. その他:節酒(日本酒1合/ビール中瓶1本/ワイン2杯までを目安に週に数日の休肝日)、禁煙、睡眠(6–8時間)、便秘を避ける、寒冷時の急な入浴に注意。

  • 第一選択薬(基本)
    • カルシウム拮抗薬(CCB)ARBACE利尿薬β遮断薬
  • 治療の進め方
    • まず1剤で開始し、目標に届かなければ早めに2剤・3剤の併用へ。
    • 利尿薬・β遮断薬の適切な使いどころを見直し(心不全、虚血、むくみ、頻脈など)。
    • 病状によりARNI(サクビトリル/バルサルタン)やMRAを追加することがあります。
  • 糖尿病の方:蛋白尿がない場合、RAS阻害薬“優先”の原則はなくなりました(ほかの第一選択薬と同列)。

服薬は毎日同じ時間に。副作用(咳、むくみ、立ちくらみ等)は遠慮なくご相談ください。


  • 高齢でフレイルがある/介護が必要:転倒や腎機能の悪化に注意し、安全第一で個別設定
  • 妊娠を考えている・妊娠中:使える薬が限られます。早めにご相談ください。
  • 心不全・腎臓病・脳卒中後より厳格な管理で再発予防を。
  • がん治療中/治療後:薬の相互作用や血圧上昇に注意し、専門医と連携します。

よくある質問(FAQ)

Q. 130/80未満にならないとダメ?

「未満」を目指すのが基本ですが、めまい・ふらつきが出るほど下げすぎは禁物。安全に続けられる範囲で調整します。

Q. 家庭血圧が病院より高い/低い

朝の高血圧(起床後)が隠れていることがあります。朝・晩の平均で判断します。

Q. 減塩しているのに下がらない

尿Na/K比を測ると、塩分だけでなくカリウム不足にも気づけます。野菜・果物・豆・乳製品を増やしましょう。

Q. いつ受診すべき?

家庭血圧の平均が135/85以上、または朝の上がりが大きいとき、薬の飲み忘れ・副作用があるときはご相談ください。


当院でできること

  • 家庭血圧のアプリ連携・見える化
  • 尿Na/K比の測定サポート(簡易測定器の使い方指導)
  • 管理栄養士による減塩+カリウム食の個別アドバイス
  • 運動習慣づくり(有酸素+筋トレの始め方)
  • 薬の最適化と早めの併用で目標達成をサポート

なかはら内科クリニックでは、これまでも家庭血圧を重視し、食事・運動療法を個々に合わせて提案し、血圧コントロール目標を明確化してきました。メッセージは、「血圧は“安全に達成できる範囲で”低いほど望ましい」ということです。基準は130/80mmHg未満を基本に、めまい・ふらつき等があれば無理をせず調整します。


高血圧はコントロールできる病気です。**「測る」「続ける」「相談する」**の3つを一緒に進めましょう。疑問や不安はいつでもご相談ください。


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